紫微垣(しびえん)
第20回、第21回

2012.2.19(土)11:00〜
2012.2.21(火)14:00〜

講義内容                      
           義理と人情
          〜どのように思いやりを伝えるか〜


〜プロローグ〜
  情けは人の為ならず〜

T義理と人情における字解より
 1.義理
 2.人情
 3.日本人としての義理と人情

U映画と文学の中の義理と人情
 1.唐獅子牡丹
 2.おしん
 3.「草枕」夏目漱石 著

V「粋」と「野暮」
 1.字解より
 2.歌舞伎「助六」より

W武士道と仁義
 1.仁義
 2.孟子の言葉
 3.武士の情け

W日本人は本当に義理人情を失くしたのか?
 1.たましひの目覚め



〜エピローグ〜
  人として大切なこと 〜お釈迦様と弟子たちの縁〜
                   強く生きるために
   


 
「義理と人情秤(はかり)にかけりゃ、義理が重たい男の世界」

映画「唐獅子牡丹」で歌われたように、後ろ髪ひかれながらも、戦いに出てゆく男の姿を表したものが、義理というものでした。


 しかし、現在において義理は、周囲の目ばかりを気にする軟弱な義理としての認識度が高く、自らの意志をもって愛するもののために飛び込んでいくような、精神はほとんど見られなくなりました。


 智に働けば角が立つ。情に棹させ ば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。(草枕より)


 それでも、賢い人間になるため、温かい人間になるため、強い人間になるために、日々努力することが、やはり人としての道だと私は思うのです。


                                              寺千代
 

塾生からの感想


 いつも分かっているつもりだけど、忙しい中にいるとついつい忘れてしまう、正しい生き方。

 紫微垣に来ると、そのことをいつも思い出せてもらえる。

 ここはそんなところです。

                            塾生の方より


塾長の言葉

 この講義を終えたあと、久しぶりに映画「男はつらいよ」を見ました。

 今でこそ、寅さんを私のようになつかしがるひとが、たくさんいるのですが、昭和が終わる頃。そうですね、ちょうど同時上映の釣りバカ日誌が出たあたりから、男はつらいよをマンネリに感じて、徐々にお客さんの足が遠のいた時期がありました。

 確かに、あの頃「男はつらいよ」をやってはいたけれども、あえてそれを映画館に観にいこうとはしなかったです。

 いつだったか、TVで48作一挙放送をした時に源公役の佐藤蛾次郎さんが、「今の映画、恋愛してても相手をだますでしょ。映画の中で人が殺されるでしょ。寅さんは、騙さないよ。見ていて安心して観ていられる。こんないい映画が日本にもあったんだよって知ってもらえたらいいな」って言ってましたね。

 そうして紫微垣が終わったあと、寅さんを観て、観終わったらもう深夜だったんですけれど、あぁ僕が安心できる世界は、ここだったんだなって初めて気がついたんですね。

 そこでは、弱者がいつも笑顔になれる場所があってね、
 生きることを許される場所が、必ずあって。

 だから、現代のように、どうすれば稼げるかとか、どうすれば人を出し抜けるかといったことに、どうしても興味がないの。
 だって、勝つということは、誰かが負けることですものね。
 「あなたも勝ちなさい」というのはね、僕のやり方ではない。

 どんなことをしても勝ちたいというのは、闘争本能でね、手段としてはどこかで通らなければならない道かもしれないけれど、至上の世界ではありません。

 人生、勝ち抜き戦ではなく、総当たり戦というね。

 最終的に勝った負けたというのは、どれだけ人を幸せに出来たかというね、ことだと私は一貫して思っているんです。

 先程の寅さんにしたって、渥美さん亡くなった時の影響力は、物凄かったでしょ?現代で見ればただの落ちこぼれが、人情の世界では、みんなが憧れるヒーローなのね。

 それは昭和だ、古いというならばね、僕は昭和で結構、昭和にこそ誇りを持っていますよ。
 でもそんな僕がね、平成の中でも仮にね、ヒーローになれたのだとしたらね、これは素晴らしいことだと思いませんか?

 『相対的なヒーロー』
 『劣等性の優等生、優等生の劣等生』というのはね、そんな私の中の誰にも譲れない誇りなんですね。


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