人生の書

9、山は登ったら、下らねばならない
 
 「右肩上がり」という言葉がありますね。

 企業の業績でも、スポーツの記録でも、会社のサラリーでもね、少しづつ上がっていくのが良いとされています。

 でもね、行き着くところまで行き着いてしまったら、その後はどうせなばならないか?


 無門関 の第46則に「竿頭進歩」という話しがあります。

 そこには、長い長い竿があった。ある僧が、それをずっと登っていった。長さ、百丈というから、300メートル。もう山の高さですね。
 彼はその天辺にまで登っていった。

 さぁ、その次はどうする?

 これが、禅問答集の有名な無門関に書かれているわけです。

 この問答を放った和尚いわく、「竿のてっぺんに座り込んで考えているようではまだまだだ」ということ。

 
 これはね、素直に降りればいいんです。
 もしくは、まっさかさまに落ちるのも正解なんです。

 人間、山に登ったって、そこにいつまでもいるわけにはいきませんよ。
 必ず降りなければならない。

 でもね、私も今日、山に行って来たんですけれども、山は登る時に体が酸性になるのね。そして降りる時にはアルカリ性になる。
 登って降りて、また登ってね、人生ってそれの繰り返しじゃないかなと、僕はそう思うんです。

 最終地点の山に登って、後は楽をしようなんて考えているから、登りきったあとがつらくなる。時が来たら降りればいいんです。
 

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