私塾 紫微垣
秋の七草
姿 | 名称 | 説明 |
萩(はぎ) | 古くから日本人に親しまれ、『万葉集』においてもっともよく読まれているやや控えめな、可愛らしい花である。 中秋の名月では、薄(すすき)とともに萩を飾って、月見を楽しむ風習がある。 宮城野(宮城県仙台市)は、歌枕として登場する地で、萩の名所。都人の憧れの地であった。 痩せた土地でも、りっぱに育つ、力強い性質を持っている。 |
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桔梗(ききょう) (朝貌の花?) |
桔梗といえば、青紫色の美しい星型の花を思い浮かべる。 陰陽師として有名な安倍晴明が使っていた五芒星(星型)の印を、桔梗紋といい、清明神社において、神紋とされている。 花びら同士がついていることから、英名はbollon flowerと呼ばれる。 |
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葛(くず) | 葛は、マメ科のつる性の多年草。濃い赤紫の花が、つるに沿って、下から順番に生えていくのが、特徴である。初期の風邪を治すのによく薬局で薦められる葛根湯(かっこんとう)は、この葛の根を干したもので漢方薬の仲間であり、くずきり、葛餅などの食用にもなる。一方、あちこちで根を生やすことから、農林業を営む人たちから、有害植物とされている一面もある。 葛の文字が、「葛飾区」の地名に使われている。 |
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藤袴(ふじばかま) | キク科の植物。この花の名前を聞いて、源氏物語の第30帖を想い出す方も多いことと思う。藤色をした花の形状が、袴に見えることから、この名がついたと言われる。 中国から渡来したものだが、奈良・平安の時代には、帰化して雑草化している。乾燥すると、香りを帯び、漢方薬や入浴剤、匂い袋として活用される。 |
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女郎花(おみなえし) | 「女郎」を近世語の女郎と解釈するのは、誤り。おんな飯の意。 あまり知られていないが、「男郎花(おとこえし)」なる花もある。 男郎花は、見た目が白く米の飯のように見え、女郎花は、見た目が黄色い色をしており、粟(あわ)飯のように見える。米は、男飯。粟は、女飯と。 これは男尊女卑というよりも、陰陽説における分類方法によって名づけられたものであると言えよう。(ex.男坂、女坂等) 日本全土(沖縄を除く)及び、中国、東シベリアにかけて分布している。 全草を乾燥させて煎じたもの(敗醤)には、解熱・解毒作用があるとされる。 |
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尾花(おばな) | すすき(薄、芒)のこと。茅(かや)ともいう。イネ科の植物で、穂全体が白っぽくなり、風に乗って種子を飛ばすことが出来る。 横井也有の俳文集『鶉衣(うずらころも)』が出典とされる『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ということわざは有名。 すすきを「尾花」と呼ぶのは、動物の尾に見立てたことによる、すすきの古語である。 中秋の名月では、萩(はぎ)とともに薄(すすき)を飾って、月見を楽しむ風習がある。 茅(かや)として、茅葺(かやぶき)屋根の材料や、家畜の餌としても利用される。 |
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撫子(なでしこ) | 「撫でし子」に通じ、しばし子供や女性にたとえられる。 源氏物語第二十六帖の巻名「常夏」とは、この花のこと。光源氏と玉鬘が常夏の花(撫子)を詠んだ和歌「なでしこのとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人や尋ねむ」に因む。 当時の貴族にとても気に入られていたことがうかがえる。 ナデシコ科ナデシコ属の品種は、北半球の温帯域を中心として300種ほど確認されているが、そのうち二種類ほどは、日本固有種である。 写真の河原(かわら)撫子は、別名大和(やまと)撫子とも呼ばれ、花言葉は可憐・貞節を表す。 同じナデシコ属の仲間に、カーネーションがある。 |
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画像提供:花ざかりの森,photolibrary
秋の七草の覚え方
『萩(はぎ)、桔梗(ききょう)、
葛(くず)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、
尾花(おばな)、撫子(なでしこ) 秋の七草』
秋の七草の発祥は?
歌人「山上憶良」が詠んだ以下の2首の歌が、由来であると言われています。
2首目の、最後 に読まれる「朝貌の花」が、現代において何を指しているのか、様々な説がある
ようです。例えば、朝顔、昼顔、桔梗、木槿(むくげ)があります。
確かにどの花も、形状がよく似ています。
秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
(万葉集・巻8-1537)
萩の花(はぎのはな) 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦の花(なでしこのはな)
姫部志(をみなへし) また藤袴(ふじばかま) 朝貌の花(あさがおのはな)
(万葉集・巻8-1538)
朝貌の花の正体が、当然、桔梗であって欲しいことを願いますが、そもそも、何処から「桔梗」が
七草の仲間に入れられたのか、「朝貌の花」がどこに行ってしまったのか、不思議です。